留学先の大学の授業

一般に、欧米の大学では日本の大学のような入学試験はありません。ポーランドの大学の英語コースに入学するのであれば、英語要件を満たしていれば、それだけで入学できる大学もあります。イメージとしては、日本のAO入試に似ています。稀に、「matura exam」と言われるポーランドの共通一次に相当する入学試験を留学生にも課す大学もありますが、概ね大学入試は求められないことが多いようです。

ただし、入学後の授業は非常にハードで、入学時に求められる英語力と入学後に必要な英語力では大きな差があります。

入学は「広き門」

ポーランドに限らず、欧米の大学は入学より卒業の方が遥かに大変です。ポーランドの上位30大学であっても、IELTS 5.5~6.5 程度の英語力があれば、英語コースの英語力の要件を満たす場合が殆どです。IELTS 5.5 は、CEFRという国際基準に照らし合わせると英検準1級と同程度です。 英検準1級の証明書で入学許可が下りる大学は無いと思われますが、英検準1級と同程度の英語力があれば、英語コースによっては入学許可を出す上位30大学もあります。

しかしながら、欧米の大学は入学してからが勝負です。

ハードな授業

欧米の大学では、一般的に期末の試験のみで評価が決まるのではなく、レポート、ディスカッション、プレゼンテーションなどで成績が決まります。試験は、中には口述試験も含まれる場合があります。

例えば、ヴロツワフ大学の経済学部では、講義のみを行う「Lecture」とディスカッションやプレゼンなどの「Class」の2つの授業形態が、それぞれの科目にあります。 Lectureでは、大学1年生の前期から1回の授業の宿題として専門書を20頁程度読むような宿題が出ますし、レポートの宿題も出ます。また、Classでは、1年生の前期からディスカッションが始まります。 大学1年生の後期からプレゼンのClassも始まります。

ディスカッションやプレゼンは単に成績が良くなるということだけを意味せず、単位をとるための重要な要素になることもあります。例えば、期末試験の成績がギリギリの場合、ディスカッションの加点のおかげで単位が取れる、なんてこともありますし、大学2年生になると、Classのプレゼンで評価が悪いと 期末試験を受けることができなくなったりします。

専門書を大量に読むような能力は概ねIELTSの勉強で養われたものでも十分対応できると思われます。しかしながら、レポートでは試験問題で回答する文章より長い文章を論理的に構成して書く力が求められますし、ディスカッションでは 試験では問われない、話す中身が大事になり、ヒアリングとスピーキングを両方同時に使いこなすことが求めらます。プレゼンテーションも専門用語を適切に使用して、相手に伝わるような言葉の選択ができるようになる必要があります。

このように、留学先の大学の授業ではIELTS対策だけでは養うのが難しい能力が求められます。

卒業は「狭き門」

欧米の大学の授業は日本の大学の授業に比べて厳しく、途中でドロップアウトする方も沢山います。ヴロツワフ大学の経済学部は特別に厳しいわけではありませんが、ヴロツワフ大学の経済学部では、大学1年生の前期に大学の授業に参加した人数の半分程度しか大学2年生の前期には残りません。

大学2年生の授業の難易度は大学1年生の授業に比べると格段に上がり、それを嫌って夏休みから帰ってこない学生もいます。しかしながら、大学2年生になってからドロップアウトする人は少ないようです。

学科によっては、特に理系の学部では それほど英語力を求められない場合もあるかもしれません。しかし、英語で会話する力が不足すると、日本人以外の方の友だちも作りづらくなり、結果として日本人同士で固まりやすくなります。

仮に英語力をそれほど求められない学科に入学し、英語力がそれほど無くても授業についてゆける状態でも、自分の世界を狭める結果となり、せっかく現地で生活して様々な学びの機会があっても、リモートでオンラインの授業を受けているのとあまり変わらなくなってしまいます。

留学前から大学の授業を見据えた勉強をすることが重要

入学要件を満たすIELTSのスコアを取ることは、重要ではあってもゴールではありません。留学後には英語は学ぶための道具となります。スピーキングやライティングといった道具を使いこなせなければ、海外の大学で学び、卒業することも難しくなります。

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