
以前、「別の大学への編入」の記事で他の大学への編入について 書かせて頂きましたが、こちらの記事では もう少し詳しく書かせて頂きます。
ヨーロッパ共通の単位制度
ヨーロッパには欧州高等教育圏(EHEA: European Higher Education Area)と呼ばれるヨーロッパ共通の高等教育制度があります。1999年にイタリアのボローニャでヨーロッパ29か国の教育大臣が調印した「ボローニャ宣言」が基になっています。
ボローニャ宣言には学生が加盟国の大学に国境を跨いで編入や短期留学等の移動できるようにヨーロッパ共通の単位互換制度を定める内容が含まれています。 この単位互換制度はECTS(European Credit Transfer System)と呼ばれますが、ポーランドでは2007年から全ての大学でECTSを使った単位制度に改めるようになりました。
このため、全てのポーランドの大学では、ECTSを採用しているECTSを採用しているヨーロッパの他の大学に編入する際に、元の大学で取得した単位の一部を移動先の大学の単位として認めて貰えます。また、ポーランドの大学に籍を置きながら 1~2セメスターの間、 ECTSを採用しているヨーロッパの他の大学で学んで取得した単位が籍を置いている大学の単位として認められるプログラム(エラスムス)が成立するのも、このECTSがあるためです。
他の大学への編入
単位はセメスター毎の取得になりますので、他の大学に単位を持ち越すには最低でも半年は必要になります。但し、実際には 少なくとも1年次を修了していないとポーランドの大学への編入が認められることはあまりないようです。
また、単位が持ち越せるとはいえ、元の大学で取得した全ての単位が編入先の大学の単位として認められるわけではないようです。同じような学科であっても、違う大学であれば授業内容は異なります。 編入先の大学が元の大学との授業内容の差分を洗い出し、元の大学で取得した単位では埋められなかった授業は履修する必要があります。
この差分は最終的には学部長が決めるようです。ポズナン工科大学では編入先の学部長が差分やどのセメスターに編入するかを決めることが募集要項に書かれています。また、ポズナン工科大学では編入許可は編入先の学部長の意見を聞いた上で学長が決めることも記載されています。他の大学では異なる可能性はありますが、他の大学でも編入における学部長の役割は大きいようで、例えばAGH科学技術大学では編入の要望は学部長宛にメールで依頼する手続きが取られています。
大学によっては厳しい条件が課せられる場合もあります。例えば、ワルシャワ医科大学では、ポーランドの医科大学からの編入のみが認められ、しかも、全ての単位が取得されていなければならない条件が課せられています。
単に他の大学でも学びたいだけならエラスムスを活用
ここまで見てきた通り、編入は決して簡単な作業ではありません。 ポーランドの大学に在学中に他の大学でも学びたい、ということであれば、エラスムスを活用する方が遥かに楽です。(エラスムスについては、「留学先の大学から他国の大学への留学(2)」をご参照下さい。)
編入が簡単ではない以上、安易に編入することを前提に大学を選ぶのではなく、願書を出す前によく大学のことを調べておいた方が良さそうです。
情報ソースのリンク先 一覧
・ ボローニャ宣言・ECTS: Wikipedia、NAWA
・ ポーランドの大学の編入: ACADEMGO
・ ポズナン工科大学の編入募集要項: ポズナン工科大学 公式ページ
・ AGH科学技術大学の募集要項: AGH科学技術大学 公式ページ
・ ワルシャワ医科大学の募集要項: ワルシャワ医科大学 公式ページ