ヨーロッパ旅行

ヴェネツィア編①

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~千年共和国は如何にしてつくられたか?~

こんばんは、息子です。

今回の旅編ではヴェネツィアを訪れた時のエピソードをお話ししようかと思います。

 歴史上、イタリアには千年以上続いた国が二つあります。今となってはどちらも亡国ですが、一つは古代ローマ帝国、もう一つがヴェネツィア共和国です。人々の住むヴェネツィアの島々は今から1000年以上も前に男達の手によって造られた人工島であり、今なお当時の姿を保っています。

憧れの地をひっくり返してみた

  人工島と言われても歩いてるだけではしっくり来ません。街を歩けば大きな植木があったり、広場では子供達がボール遊びをしていたりと、一目では普通の街と何ら変わらないのです。重機もない時代に如何にしてこの人工島は作られたのでしょうか。

ヴェネツィアの街づくりは運河の建設を基点にして行われました。ただの運河ではありません。ヴェネツィアの運河とは一番大きな「カナルグランデ」と呼ばれる運河と、そこから毛細血管のように広がる、小さな水路のネットワークことを指します。これはヴェネツィアの主要なインフラが道路ではなくこの運河であったことを意味し、人の往来や物流も、この海の道を利用していました。

ヴェネツィアの建物には二つの玄関があり、そこに住む人々にとって、運河に通じる海の玄関は、島に通じる陸の玄関と同じくらい重要な存在でした。

「ヴェネツィアをひっくり返すと森が現れる」とは有名な言葉ですが、これは島々を建設する際の基礎工事に木材が使われていることに由来します。敷き詰められた木材の上に石材を置き、磐石となった基盤の上にヴェネツィアの街は作られました。ヴェネツィアが誕生して以降、繰り返される改修工事の度に石材の層が段々と厚くなり、木材でできた基盤は下へ下へと押し込められましたが、今でも小さい島などでは海中から支える無数の木の杭が見えることがあります。

塩野七生 (1982)海の都の物語(上),1章の図表を参考に作成

朽ちないのか?

木材と言えば日本建築にも馴染みのある素材ですが、「腐食すもの」というイメージが少なからずあると思います。伝統的な寺院や神社も腐食の度に修繕されてきました。しかし、ヴェネツィアの場合はそれが基盤となっているため、腐食の度に新しい杭に交換する訳にはいきません。であれば何故、1000年以上も支え続けられているのでしょうか。

木材の腐食は、それを起こす『腐食菌』という微生物によって起こります。この菌類は世界中どこでも酸素と水と木材さえあれば発生します。逆に言えば、このどれかさえなければ腐食は起こらないわけです。海中では酸素が乏しいため、腐食菌が活動ができません。また大部分が土の中にあるため、その僅かな酸素に触れることすらなく、長い間、このヴェネツィアの街を支えているのです。

科学も細菌もわかっていなかった時代から昔の人は物事を経験的によく知っていました。

分からないことがあればインターネットを開けば正解が出てくる、今の僕たちは、少々頭でっかちになってしまっているのかもしれません。

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