〜ルーヴル美術館を探求〜
ヴロツワフ大学に入学して半年が経つ頃、クラスメイトで仲の良いウクライナ人の女の子とヨーロッパで一番の観光地の話をしていると、その子は迷わずパリだと言っていました。
「特にルーヴル美術館が素敵、私は滞在時間の都合上、3日間しか通えなかったの」
観光というのはただでさえ時間が限られるもの、にも関わらずたった一つの美術館に3日も費やすことが当時の僕には想像もつきませんでした。何が彼女にそう言わせたのでしょうか?
事実、僕も3日間この美術館に通いましたが、全く見切れた気がしませんでした。
広すぎる美術館
ルーヴルといえば今では美術館として有名ですが、その歴史は古く、中世の頃に要塞として建造されたのが始まりでした。要塞と言っても、一度も攻め入れられたことがなく、歴代の王達によって増築が繰り返されたのが現在の美術館の原型となっています。
増築の結果、広大な敷地を有するルーヴルですが、加えてとんでもなく入り組んだ構造をしており、非常に迷いやすいです。また、数万にも及ぶ展示品が密度を持って並んでいるのもその複雑な構造を一層引き立たせているような気がします。
ルーヴル美術館で見るべき彫刻3選
美術館として世界最大級を誇るルーヴル美術館ですが、忙しい訪問客の方々のために、個人的に度肝を抜かれた作品達を紹介します。
『眠るヘルマプロディートス』
最初に紹介したいのが、ヘレニズムの時代から『眠るヘルマプロディートス』です。この作品は古代ローマの名門ボルゲーゼ家が代々所有していたコレクションの一つですが、ナポレオンによってルーヴルに持ち帰られてしまいました。
ヘルマプロディートスはギリシア神話に登場する神で、ヘルメスとアフロディーテの息子で雌雄同体の美少年です。それが転じて雌雄同体は英語で「Hermaphrodite」、そのまんまですね。
この作品の見どころはなんと言ってもヘルマプロディートスが眠るベッドの質感です。大理石の彫刻とは思えないこの柔らかな質感。肉眼でも見れば見るほど目が騙される、完璧な作品です。
『サモトラケのニケ』
続いてヘレニズム時代の『サモトラケのニケ』です。
この石像は謎に包まれています。ただ確かなことは、これがギリシャ近海にあるサモトラケ島で発見されたこと、モチーフがギリシア神話に登場する両翼の勝利の女神ニケであることです。
19世紀に発見された時にはすでに両腕と首から上が欠けた状態でした。しかし、この欠けた状態だからこそ、美しいのだと言う人もいます。
考古学調査と現在の技術の粋を集めれば、修復することは可能なのか?
しかし、そんなことは野暮であ離ます。全ては想像のままに。
もしも、この像が完璧な状態で発見されたのなら、ここまで人々の心を打つことはなかったのかもしれません。
美化された『ユリウス・カエサル』
最後の作品を紹介する前に、少しミロのヴィーナスについて触れさせてください。黄金比で有名なミロのヴィーナスですが、筆者は生粋の古代ローマファン。であれば、数学的にも意義を持つ究極の美しさよりも推しのかっこよさをここで紹介したいところです。
紹介するのは18世紀の作品、所謂、新古典主義の頃の作品です。
共和制ローマに終止符を打ち、実質的なローマ帝国の初代皇帝であるユリウスカエサルですが、後世に造られたこの石像はかなり美化されています。
まず、史実によると、ユリウスカエサルは「ハゲの女たらし」と呼ばれていたほど髪の毛が薄かったそうです。
ところがこの石像はフサフサな状態で表現されています。
また、体型もこんなにスラットしていた訳でなく、中年太りしていたとも言われています。
それも2000年以上も前のこと、細かいことは気にしない。
ただ一つ、この石像が、多くの功績を残したユリウスカエサルの名前に相応しい姿をしていることに間違いはありません。
おまけ
ミロのヴィーナス