ヨーロッパ旅行

ストックホルム②

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〜ノーベル賞の街〜

ノーベル賞は悲劇から生まれたのか?

人類の進歩に大きく貢献した人間を讃える賞は、しばし悲劇的な道を辿った人物の名を冠することが多いです。例えば、数学の世界で最高の賞とされるアーベル賞。その名前の元となった数学者のニールス・アーベルは当時の数学界をひっくり返すような世紀の大論文を書くも、まともに読んでもらえず、失意のうちに肺結核でこの世を去ります。

では誰もが知る名誉ある賞、ノーベル賞、その名前の元となったアルフレッド・ノーベルの人生は幸福だったでしょうか。ノーベルはダイナマイトの発明と特許で巨万の富を築いたことでよく知られていますが、同時に平和主義者としても知られていました。その平和への一助となるよう、遺言としてノーベル賞の設立をします。

彼の人生が不幸であったかについては議論の余地がありますが、矛盾を抱えた生涯だったことは事実なのかもしれません。

平和を願いつつも、大量殺戮を可能とする発明で財を成し

人好きで聡明、機知に富んでいながら、生涯孤独でした。

実際、ノーベル賞設立の明確な理由は不明ですが、設立のきっかけとなった最有力の出来事は

ノーベルの弟が死没した際に、それをノーベル自身のことだと勘違いしたフランスの新聞が「死の商人」という言葉と共に誤って報じたことだと言われています。

僕には、彼もまた人生の中で大きな葛藤を抱えていたのだと思えてなりません。

ノーベル賞博物館

ストックホルム、ガムラスタンの中心部にノーベル賞博物館があります。

ここに来る前、僕の頭の中には密かな仮説がありました。

ひょっとしたら近代で最も重要な発明はノーベル賞ではなかったかと。

実は以前、ノーベル賞の電話待ちをさせて貰った経験があります。受賞の電話は一度しかかかって来ず、それが留守だとすぐに次の候補へ回ってしまうため、ノーベル賞候補の研究室とかだと、毎年受賞の時期は常に誰かが電話番をしていなければならないのです。

僕が実際に任されたのは15分ほどの短い時間でしたが、その間、この世界中誰もが知る歴史的で名誉ある賞の力について考えていました。

インターネットやコンピュータなど、今日の生活を支える技術の全ては歴代ノーベル賞受賞者達の功績の上に成り立っています。この名誉があることで世界中の学会が盛り上がり、一人の科学者を人類の英雄にするのです。

功績には名誉と褒賞を。これがどれほど学生に希望を与え、縁の下の力持ちである受賞者達を救ってきたでしょうか。

しかし、実際に博物館で目の当たりにするノーベル賞は考えていたよりも遥かにささやかなものでした。夕食会で出される食事は特別なものではなく、一般人でもレストランで堪能できるものであり、そのデザートに至っては併設するカフェでも楽しむことができます。もう一つ素直に申しますと、スウェーデンの王宮は、その他のヨーロッパの宮殿と比べても厳かなものです。大きな名誉であることは疑いようもございませんが、この一日のために人生を懸ける学者はそれほど多くないことでしょう。

『オタク』という言葉がございますが、まさに人生を通して一つのことに身を捧げたオタクの中で、運命の女神に微笑まれた者が、晩餐会のスピーチで「ラッキーだったぜ!」と笑いをとり、最後には博物館のカフェの椅子の裏にサインとメッセージを残す。それがノーベル賞だったのだとこの旅を通じて思わせられました。

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