ストックホルム① 〜生き残った街〜
北欧のヴェネツィアとも呼ばれるほど水と建築の調和が美しいスウェーデンの首都ストックホルム。
今回はその魅力を深掘りしていきます。
魔女の宅急便の舞台へ
宮崎駿の『魔女の宅急便』その舞台となった街はヨーロッパ中に点在しておりますが、その一つがストックホルムの歴史地区『ガムラスタン』です。幸運にも今回の宿泊場所となるホステルから歩いて1分のところに、ジブリファンを感動させる噴水があります。
他の街並みもどこかで見たことがあるような懐かしさに溢れています。
季節も良く、歩いているだけで心の底から幸せが込み上げてくるような場所です。
ヨーロッパは死んだ
この頃の僕はジャン=リュック・ゴダール晩年の映画『Film Socialisme』にハマっていました。
豪華客船がエジプト、パレスチナ、ナポリ、ギリシャなどヨーロッパの歴史的な湾岸都市を巡る話ですが、その船の上ではロシアのスパイや、かつてナチスの人間だったドイツ人、など多くの思想が渦巻いています。
戦争の泥沼から抜け出して自由を取り戻したヨーロッパと、取り残されたパレスチナとアフリカ。
もし人類が本当に知的財産権を信じているのなら、ギリシャに対して多額の負債があるはずですが、今だにこの国はアリストテレス、ソクラテス、プラトンへの対価を一銭も得ずに貧困に喘ぐままです。
かつての「ヨーロッパは死んでしまった」というセリフがずっと引っかかっていました。
確かに明治維新以来、日本は文明開花の時代と言われ、西洋文化を必死に追いかけてきました。和服の代わりに洋服を着るようになり、フランスやドイツの学問を取り入れ、そのうち日本文化の精神的価値さえも見失われて西洋魂を我が物とするようになっていきました。そうでなければ『西側』と軽はずみに自称するはずがありません。
ところが、旅先で眼にする西洋の国々は、少なくともかつての日本人が見ていたものほど輝いているようには思えないのです。街中に溢れかえるホームレス、重要建築にも構わず描かれた落書き、とめどなく流入する移民に苦しむ姿は、かつての姿を想像しながら訪れる日本人にとっては寧ろ痛々しく感じるでしょう。
日本人にとって、かつて憧れの対象であったヨーロッパは死んでしまったのかもしれません。
生き延びた街
ストックホルムを見て何よりも感動したのは、その街並みの美しさです。
確かに、水面下では銃犯罪が急激に増加しつつあり、ところどころ不穏な雰囲気を放つ場所も見かけましたが、全体的にはとても綺麗なのです。僕はそこに生き残った豊かなヨーロッパの姿を見ました。