正規留学をして海外の卒業される方の数を推計してみましたが、かなり希少なことが分かりましたので 今回は 正規留学して海外の大学を卒業した方の数をテーマに書かせて頂きます。
海外の大学を卒業された日本人の数の推計: 年間 1,000人 程度
トビタテ！留学Japanによると、2015年度以降、1年以上の留学生数は、コロナの一時期を除けば概ね2000人程度で推移しています。大学の交換留学プログラムの多くは1年未満なので、ここに分類される方の大半は正規留学生だと思われます。
この数字を元に幾つかの前提をつけて試算すると、海外の大学を卒業される日本人の数は年間 1,125人でした。（前提条件等の詳細は 本ブログ末尾の「【参考】推計の詳細」をご参照下さい。）
この推計には、途中で卒業を諦める留学生が多いことや、留年が多いことは盛り込まれていません。また、推計の段階で多めに見積もっています。これらのことから実際は1,000人より少ないと思いますが、ここでは海外の大学を卒業された日本人の数は年間1,000人程度と推計します。
難関資格合格者数や大学院卒業生数との比較
1,000人という数字が どの程度希少性のある数字かを見るために、国内の難関試験の合格者数や大学院生の卒業生数と比較してみます。
| 難関試験 又は 高等教育機関 | 合格者又は 卒業者 |
|---|---|
| 海外の大学卒業生（学士課程＋修士課程、推計） | 1,000人 程度 |
| 公認会計士（2024年） | 1,603人 |
| 司法試験（2024年） | 1,592人 |
| 医師国家試験 （2024年） | 9,547人 |
| 日本の大学院修士課程卒業者（推計） | 7.4万人 程度 |
人材も需要と供給で決まるので、一概に「多い・少ない」は言えないとは思いますが、ポータブル スキルの代表格が英語であることを考えると、海外の大学を卒業した正規留学生は就活市場でもっと注目されて良いように思います。
ヨーロッパ正規留学卒業生に注目すべき理由
アメリカの大学は学術研究機関として位置づけられる一方で、ヨーロッパの大学は人材育成機関として位置づけられています。
米国で4年の学部生向けプログラムを卒業できる人は概ね6～7割です（2020年、在籍期間以内の場合）。 一方で、ポーランドの大学の学部生向けプログラムでは4割程度です。（ドロップアウト率は2010年で57％。）この数字は実際にヴロツワフ大学の経営学科に在籍する息子の肌感覚とも一致します。
息子によると、人材育成機関としての色彩は大学院より学部生の方が濃厚で、学士課程のカリキュラムの方が修士課程のカリキュラムより厳しく、しかも基礎科目をみっちり勉強するようです。もちろん、大学によっては基礎科目をあまり重視しない大学もあるのだと思いますが、伝統的な総合大学では 人材育成機関としての色彩は強いのではないか、と思います。
他のヨーロッパの国のドロップアウト率は米国並みか、米国以下の国も多いようですので、ポーランド程は厳しくはないのかもしれませんが、それでも人材育成機関として位置づけられているヨーロッパの大学で鍛えられた正規留学生はもっと注目されても良いように思います。
【参考】推計の詳細
トビタテ！留学Japanに掲載された数字の元の資料（独立行政法人日本学生支援機構の資料）を見ると、統計に使用されたデータは日本の大学などが提携する大学に交換留学をしている方の数がベースですが、「協定等に基づかない留学についても、日本人学生の在籍学校において把握している限りで回答を得ており、併せて公表する。」とありますので、息子のように日本の大学を介さないで直接留学している留学生の数も部分的に含まれていることが分かります。
この数字から漏れている日本人留学生もいるので、ここでは実際の正規留学生の数はこの統計が拾えている2,000人の1.5倍である3,000人だと仮定します。また、統計に含まれる留学先は、大学も大学院以外にも、専門学校や高等専門学校生が含まれますが、ここでは計算を単純化するために1年以上の留学生数は海外の大学の大学生と大学院生だけだと仮定します。
アメリカは4年制でヨーロッパは3～4年制ですが、ここでは４年とします。（1年以上の留学生の８割はアメリカとヨーロッパに留学しており、残り２割のアジアもシンガポール等 主だった国は４年制のようです。）大学院の修士課程は2年で卒業し、1年以上の留学生には専門学校等は含まれず、大学と大学院修士課程のみが含まれ、全体の半分が大学修士課程だとすると、毎年正規留学を修了して卒業する人の数は概ね年間 1,000人強、という計算になります。
〇大学院正規留学の卒業生（年間） ＝ 2,000人 x 1.5倍 x 50％（大学院生の割合） x 1/2（2年で卒業） = 750人
〇大学正規留学の卒業生（年間） ＝ 2,000人 x 1.5倍 x 50％（大学生の割合）x 1/4 (4年で卒業） ＝ 375人
大学院正規留学の卒業生（年間） ＋大学正規留学の卒業生（年間） ＝ 1,125人
情報ソースのリンク先 一覧
・ 海外留学者数： トビタテ！留学Japan
・ 公認会計士 合格者数： マイナビ
・ 司法試験 合格者数： スタディング
・ 医師国家試験 合格者数： マイナビ
・大学院入学者数： 科学技術・学術政策研究所
・ 米国大学の卒業率： National Center for Education Statistics
・ ポーランドの大学のドロップアウト率： Spring Nature Link