アウシュビッツ②

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〜中谷剛さんの話を聞いて〜

はじめに、アウシュビッツに残る歴史は見るも悲惨で残虐な殺戮の歴史です。それについて触れるのですから、本記事が読んでいて心の踊るものではないことは最初に保証しておきます。

ユダヤ人収容所

ユダヤ人は第二次世界大戦中にドイツが行ったホロコーストの最大の被害者です。

アウシュビッツを含む強制収容所はポーランドのあちこちにありましたが、アウシュビッツだけをとっても、連れられてきたユダヤ人の数は100万人を超えました。

連れられてきた時点で、男は強制労働へ、女性と子供(15歳以下)はガス室へ送られました。

ガスといっても使われたのは安価な殺虫剤です。これを考案したドイツのとある官僚は「良いアイデアだろ」と同僚に対して言ったそうです。何をもって良いアイデアかなんて、知りたくもないです。

もちろん、手を下すのはドイツ人ではありません。行われることの全ては同胞のユダヤ人の手によって為されました。彼らは自分達の命の保障と引き換えにガスを投げ入れ、後始末まで行ったのでした。

アウシュビッツとは正に超効率的な人殺しを実現した装置なのでした。

使われた殺虫剤の缶

アウシュビッツの本質

アウシュビッツをいつまでもユダヤ人という言葉のみで語っていては、その本質を欠いていると中谷さんは語ります。その本質は、当時盛んな研究であった『優生学』にありました。

つまり、生まれた時から人間には優劣があるという研究です。これは実は、日本にも『優生保護法』という名前で90年代の中頃まで存在していたイデオロギーでした。

アウシュビッツができる前から、第二次世界大戦よりも前にドイツにはそういう思想がありました。

それはユダヤ人以前に、身体障害、精神障害を持つ人や当時は病気と信じられていた同性愛者など、遺伝的に欠陥があるという人に対しては何をしても良いと人体実験などが繰り返されてきたのです。

侵攻後にその優生思想の矛先が、当時社会的な地位を弱めていたユダヤ人に向いただけなのでした。

アウシュビッツがユダヤ人に対してあそこまで残虐になれたのは、優生思想に基づいて、同じ人間として見ていなかったに他なりません。

そしてこの非人道的な行為のおかげで、ドイツの医学は世界最高と称されるまでになったのです。

アウシュビッツは今でも生きている

アウシュビッツは、皆さんが思っているよりも身近な存在なのかもしれません。

「人は生まれながらに平等だ」そう口では語っていても、腹の中では「生まれながらに優劣はある」と思っている方、今でもいるのではないでしょうか。「日本人は優秀だ」とか「日本人は遺伝的に優れている」とかいう言葉はみんな好きですよね。

普通に学校に通っていて、普通の人ならば良い。では既存の学校教育から溢れ、不登校になり、病院でADHDや自閉症と診断された子供達はどうでしょうか。

これら全てが優生学的思想です。

僕の知り合いには読み書きのできない子がいます。非常に優秀な子ですが、ディスレクシアという学習障害があります。そういう子が受験をするとなった時に、答案用紙の代わりにパソコンでタイプしても良いかということになりますが、漢字変換機能が使えちゃうからダメだとなるようです。

世の中の多くの人々にとって、紙とペンを使うことは容易いことですが、それを障害と感じる子供もいます。

「階段を作る、障害が生まれる」という中谷さんの言葉は今でも記憶に強く残っています。

受験に紙とペンを使わなければならないというルールを絶対肯定する現在の日本社会には未だアウシュビッツを生み出した優生思想が蔓延っていると感じます。

最後に

アウシュビッツの教育的意義は疑う余地のないほどです。
ここを訪れてこそ、一人前の人間となると言う人もいるほどに。

その際には是非、中谷さんのツアーに参加してみてください。

より一層深い旅になること間違いないでしょう。